会計事務所経営の岐路「現実的な経営改善計画書に必要なシート類」

各金融機関は自行なりの「経営改善計画書フォーム」を持っており、それに沿って書くように融資先に指導します。

私の感想ですが、その一連のフォームで抜けているのは、前回にも話した「数値の根拠の対策や「戦略」です。さらに、チェックができるようなアクションプランも曖昧な感は否めません。金融機関に提出する為だけの、経営改善計画書ではなく、自社の経営改善が実現し、継続するような経営改善計画書なら、結果的に金融機関も評価します。そこで、どんなシートを準備すれば良いのでしょうか?下記に紹介するのは、本来の経営改善計画書を目指した場合のシート類です。

  1. 事業概況報告書シート
    • これは、今の業界の動きや、自社の業績悪化要因を外部要因と内部要因から書くものです。私 は、これをSWOT分析の「外部要因分析である「脅威」と「弱み」から、導くようにしています。
  2. SWOT分析クロス分析シート
    1. 外部要因である「機会」と「脅威」
    2. 内部要因である「強み」と「弱み」を、チェックリストに沿って、細かく固有名詞をいれて箇条書きにします。
    3.  これを「4つの窓」と呼んでいます。次に、同じシートの中にクロス分析として、
      • 各「機会」と「強み」を掛け合わせた「積極戦略ゾーン」
      • 各「脅威」と「弱み」を掛け合わせた「致命傷回避・徹底縮小戦略ゾーン」
      • 各「機会」と「弱み」を掛け合わせた「改善戦略ゾーン」
      • 各「脅威」と「強み」を掛け合わせた「差別化戦略ゾーン」に固有名詞と概算数値を入れて、箇条書きに記述します。
  3. 優先順位決定シート
    • SWOT分析クロス分析でいろいろな戦略や具体策が検討され文言化されます。しかし、全部実行できるわけでありません。中には、労力の割にはあまり効果のないものや、効果が出るまであまりに時間のかかるものがあります。それをチェックリストの沿って配点します。その結果、優先順位が出ます。優先順位の高いものは、効果的で、実現度の高いものになります。面倒くさい作業のように見えますが、これを作成しないと、対策ばかり出して、実行度の少ないものになりかねません。
  4. 実抜体系図
    • これは、SWOT分析クロス分析から出た具体的戦略で、優先順位の高いものを
      1. 「新商品開発・商品改良等の商品に関するカテゴリー」
      2. 「新規顧客開拓や、エリア・チャネル開拓、既存客カテゴリー」
      3. 「コスト改革カテゴリー」
      4. 「品質向上・品質改革カテゴリー」
      5. 「組織改革・企業体制カテゴリー」 の5つのカテゴリーに分類して、中期目標を設定します。「実抜」とは「実現可能性の高い抜本対策」に略で、金融機関が期待する戦略コンセプトです。中期目標は、大きな経営指標や目標数値も入れるようにします。なぜ、こんな体系図を作成するか?戦略がどういう経路で生まれ、どんな方向性を目標にしているかを、金融機関等の第3者や、この検討に参加していない社員などに理解しやすくさせるためです。
  5. 各戦略の概算数値(売上、原価、経費)整理シート
    • このシートは、クロス分析から優先順位の高い戦略を実行することで発生する売上や原価、経費を概算で計算します。特に、新たな戦略を実施する場合、先に原価や経費が発生して、売上は半年後、1年後になることも多々あります。それもこのシートに年度別に記入します。このシートに書かれた概算数値が、その後の経営改善計画の中期損益目標に反映され、資金計画に反映されます。
  6. 中期損益目標(収支)シート
    • このシートは経営改善初年度、2年後、3年後、5年後の科目別売上、原価詳細、科目別経費、営業利益、経常利益、キャッシュフローがわかるシートです。先ほどの各戦略の概算数値が入っており、年度後の利益状況がわかり、返済原資が、どういう背景から生まれるかがわかります。私は、このシートを左側に収支計画、右側に数字でわかる具体策を設けて、一目でわかるようなシートにしています。
  7. 資金計画シート
    • 中期収支計画から、資金計画を作成します。これは資金がいくら必要で、今後いくらの資金を経営改善でどう改善しているかが、年度別に書かれたものです。このシートは、フォームの違いこそあれ、どの機関も大体同じようなものです。
  8. 中期行動計画(ロードマップ)
    • このシートは、各戦略を実施する為の3か年行動計画です。即できる対策は構造改革効果は少なく、収益構造転換をするなら、最低でも1年の準備期間と、試行期間があり、収益貢献ができるようになるには、2年目以降というのが、一般的だと思います。組織に余裕がある規模なら「垂直立ち上げ」で、1年で構造転換もありうるかもしれませんが、多くの中小企業はそうはいかないでしょう。したがって、3か年のロードマップが必要だと考えてます。
  9. アクションプラン(単年度行動計画)
    • ロードマップから初年度に具体的、「誰が、何を、どのように、どう行動するか」を細かく書くシートです。このシートは、単に「いつ、どう実現する」という結果行動だけではなく、実現に導くまでのプロセス(段取り)まで詳細に決めて記述してい来ます。そして、それを、3か月単位(四半期)で、モニタリング(経過観察)できるように、さらに詳細に「どの会議で、どう報告するか」まで決めて、毎月チェックをかけていきます。

これまで述べてきた9枚のシートがあれば、かなり金融機関への説明資料としては、かなりハイレベルだと思います。これを会計事務所が付加価値として、作成できる機能があれば、金融機関からの評価は高くなるのは当然のことでしょう。こういう付加価値は「経営コンサルタントの分野で、会計事務所はそこまで入れない」と逃げ腰になる事は、今後は許されないかもしれません。

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