赤字会社の社長の性格と行動特性

赤字の要因は外部要因、内部要因が絡み合って発生します。経営者の責任だけに帰するのは厳しい面もありましょうが、しかし、赤字の最終的な責任は、やはり経営者にあります。

先日、ある会計事務所の全体会議に参加して事務所のコンサルティングしている時に、所長や職員から

「赤字企業の社長にはどんな特徴がありますか?」

と言う質問を受けました。

「これが原因だ」と断定するのは難しいですが、赤字企業の社長にはある方向性があるように思います。これは、私たちが30年間のコンサルティングで感じた印象とでもいいましょうか。今まで多くの優良企業ともお付き合いしてきましたが、それ以上に赤字を経験した企業ともお付き合いしてきました。様々な要素で赤字に転落する事はありますが、優秀な企業は「赤字脱出」の打つ手も早いので、連続赤字を出す事はそう多くありません。しかし、何年も赤字体質から抜け出せない企業の社長には、確かに似たような特徴があります。

今回と次回は、「赤字体質からなかなか抜け出せない社長の特徴」を整理してみたいと思います。コンサルタントや会計事務所の職員も、自分の顧問先経営者に当てはめてみてください。

1、赤字の原因と対策を冷静に客観的に分析していない。

「何故赤字なのか」何回も本質を吟味しない 理論的に考えない経営者です。恐らくこういう経営者は感情論、人情論が先行し、具体策が本質を捉えてないケースです。現象面だけに右往左往し、その背景、本質を理論的に分析していません。仮に本質がわかっていても、勇気を持って行動できないという事でしょう。

2、リストラ策、設備投資、拡大政策も資金的な裏づけを吟味せずに、行動に走る

何かの打開策に向けて行動するには、必ず資金が必要となります。資金の裏づけがない対策は長続きしません。実際に、リストラをするにも先に費用が発生し、コスト削減効果は後から出ることが多いのです。設備投資や広告宣伝にしても、中途半端な形で成果までいかないのは、資金が続かないからでしょう。「対策=資金政策」を同時に考えない経営者は、赤字対策も抜本対策にならないといえます。

3、新戦略、商材開発など、会社の新たな戦略に率先垂範して行動しない

既存事業からの脱皮を考え、新たな事を行なえば当然 リスクはつき物です。リスクが取れる経営者が直接行動せずに、他の役員や幹部任せではほとんど失敗するようです。「中小零細企業において、新規事業の成功率は低い」と言われてますが、経営者が責任者になり、成功するまで続ければ、可能性は高いと言えるでしょう。後はその新規戦略の妥当性と資金力だけです。

4、衰退が明らかな既存の商品、既存の顧客を当てにして、新たな開拓・開発の腰が重い

今の業績は過去の努力の結果です。今まで自社に貢献してきた商材や顧客が、明らかにマイナスに進んでいるなら、そんな過去にしがみついていて、未来が拓けるはずがありません。経営者の経営者たる行動は、業種業態に関係なく、「新たなことへの挑戦」です。腰の重い経営者は、やはり慢性的に業績の良くない会社が多いようです。

5、損益計算書を時系列でチェックせず、売上、原価、経費のバランスを見た対策を出していない

赤字が急激に発生した場合は、存亡をかけたなりふり構わない対策を打つでしょうが、慢性的な場合は、損益数値を時系列でチェックし、傾向を見るべきです。その上で売上、原価、経費にバランスを見た対策を考えます。このバランスとは、経費を考えて少しずつ対策を打つという「逐次投入」を言うものではありません。「一気呵成の投資」をするなら、それ以外の経費を極端に縮小するなど、「選択と集中」を行なう事を意味します。中途半端な対策に終始する赤字社長は、「する事としない事」の差がハッキリしない人が多いようです。

6、資金繰り表を定期チェックせず、先行的に資金不足を確認していない

収入予定と支出、過去の流れを常にチェックすれば、数ヶ月先の資金不足は分かるはずです。資金繰りを誰かに任せ、社長自身は損益だけ追いかけても、資金的な裏づけのない対策は長続きしないと先ほど述べたように、全てが中途半端になります。『損益と資金繰りは表裏一体』ですから、先々を考えて資金計画を考えるべきです。極端なな言い方をすれば、これは小規模企業に多いのですが、「赤字社長は資金繰りをみていない」ケースが多いようです。

7、赤字の真っ最中でも、同族不仲で、一丸で再生の努力ができない

赤字の時に同族の不仲が全面にでるようでは再生などほど遠いと言えます。経営者は大儀の為に小異を捨てることが肝要です。元来、同族企業の良さは、「御家の一大事に結束」する事であるのに、感情論が先行し、一枚岩になれないのです。ここは一時休戦して「赤字脱出の為に、我を捨てる」事が肝要です。今まで、多くのコンサルティングの経験の中で「会社が傾いているのに、同族が喧嘩している」というケースが数件ありましたが、そういう会社は「倒産直行便」を自ら運転しているようなものです。

8、経営者・役員が率先して難しい事や嫌ごとの責任者になっていない

未収対策、クレーム処理、値上げ交渉など、一般社員では嫌がる事は経営陣が行なう。 その後に社員がついてくる  

9、赤字の時ほど、経営者は問題の原因を、他責にせず自責にする。

そして自ら積極的なコミュニケーションを図る 業績が悪いと社内が暗く、会話もなく、ダメな経営者ほど、他に責任転嫁しがちである。 本来は全く逆であり、悪いときほど、自ら会話し、人を責めない事である  

10、会議で決まった事を経営者自ら遵守するよう意識的に取り組んでいない

赤字なのに「決まった事を決まったようにしない経営者」には明日はない。 黒字化の決意不足の批判を受けても仕方ない。  

11、赤字の場合でも、会社を再生する事が全てに優先させていない

「義理欠く」は仕方ないと思って非情になる事も辞さない 義理人情が黒字化を遅らせる。 会社としては非情に徹し、経営者個人が負担のない範囲で義理人情を重んじる事はやぶさかではない  

12、赤字なのに一切の見栄を捨てる覚悟がない

他人の眼を無視する位の覚悟を持つ。 赤字の時に、まだ「見栄をはる」ようでは、再生は不可能である。 見栄につながるクルマ、接待、遊び全てカットの対象である。 裸の覚悟が求められる。  

13、赤字なのに「恥をかく」を気にしている

会社を潰す恥に比べれば、再生途中の恥はたいしたことではない 。 「恥」と思うかどうかは価値観で決まる。 再生後に、乗り越えた「恥」は経営者の胆識を鍛える。 「一時の恥」はただ我慢あるのみ。  

14、思い切った経費のカットを、先ず自分から行なっていない

経営者経費のカットなくして、その他の経費の削減は長続きしない。 赤字の時に「経営者には社員に分からない経費がある」とどんなに理屈を言っても、社員の目は厳しい。 自らの経費カットを実践し、公開し、その後社員の協力を貰う。  

15、意思決定と行動のスピードは平時の倍速で行なっていない

赤字なのにトロトロとした行動では黒字化が遠のく。 赤字対策を打つのに、『コンセンサスをとる』為に時間をかけているようでは、益々泥沼に入る。 迅速こそ命である。  

16、赤字原因の顧客、商材、市場も今後の見通し次第では捨てる勇気がない

捨てる事で新たな知恵がわく 「捨てる」事はトラブルとリスクが生む可能性がある。 では持ち続ける事のリスクと比較した場合、どちらが「赤字脱出」に直結するかを考える。 ここで長期的な視点に捉われると、「打つ手が限定」される。 勇気を持って英断する事が重要だ。  

17、借入が出来たり、資金対策に一息つけると急に赤字対策の意識が遠のく

次に資金が枯渇した時は手遅れになる 借入や資金調達で一時的な資金が出来ると、安心してしまう経営者は意外に多い。 仮に資金ができても直接金融でない限り、それは返済義務がある。 今後黒字経営にならなければ更に返済が厳しくなってしまい、それこそ二進も三進も出来なくなり、新規融資もほぼ不可能になる。 一度赤字体質になったら決して安堵せず気を緩めない事が肝要である。  

私達が今までコンサルティングさせて頂いた企業で、実際に赤字体質からなかなか抜け出せない企業は、ほとんどこれらの項目が該当しているようです。 赤字は「経営者の性格次第」と言われる方もいらっしゃいますが、性格プラス覚悟の不足が、赤字脱出を遅らせていることも多いようです。 コンサルタントや会計事務所の職員は、そういう事も含んで客観的に指導する事が必要でしょう。

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