新規事業参入時、検討時コンサルタント

事業の成長発展、又は基盤の安定化の為、新規事業に取り組む企業は多いのですが、成功確率はどうかと言うと、中小企業においては、結構厳しい結果になっている所の方が多いのではないでしょうか。但し、新規事業の成功の定義も各社バラバラで、『黒字化すれば成功』・『利益貢献すれば成功』・『若干の赤字位なら成功』などと、いろいろあろうかと思います。RE-経営が今までコンサルティングを通じて、様々な新規事業への取組の場面に立会い、その中から『新規事業の成功法則』と言うものがあるようです。

 

新規事業が必要な時


1、 成長戦略がなければ、「企業の永続的発展」はない
(1) 人口減少と経済規模縮減化の中で、既存事業のみで成長させるには困難。
(2) 成長なければ、社内の閉塞感が生まれ、企業も人も、顧客も商品も停滞感から抜け出せない。

2、 手遅れになる前に検討を始める
(1) 本業が完全にダメになった時では、リスクのある新規事業へは取り組めない。
(2) 悪くなった後では資金捻出・借り入れも難しい。
(3) 新規事業は即効が難しいので、中期計画で取り組むのが本来の姿。

3、 本業の売上が大幅に減少し回復が見込めない時
(1) 過去3ヵ年以上、売上減少が顕著な場合は、新規事業は不可欠。
(2) そこまでの売上減少は単なる不景気が原因ではなく、事業の構造の問題。

4、 価格競争の激化で本業の利益低下に歯止めがかからない時
(1) 既存商品の利益確保が、直接経費さえも賄えないなら新規は早急に検討する。
(2) 商品自体のマーケットにおける存在価値がないと判断された場合も同じである。

5、 売上が限られた商品の依存度が極端に高い時
(1) リスクヘッジがなければ、主力商品が悪化すると手が打てない。
(2) 原則として1品依存度は30%以内、又は主力商材は3品目。

6、 販売先や顧客がどこか一局に集中している時
(1) 主力得意先の業績不振をもろにかぶる経営もリスクヘッジではない。
(2) また一局依存は、自社の独立性を脅かし、自社の生殺与奪の権利を握られている事になる。
(3) 原則として、一局依存度も30%以下を目指す。注文生産の場合なら10%以下。

7、 組織の活性化・余剰人員の吸収先が必要な時
(1) 既存事業の悪化に伴う人件費抑制の為の再配置先が必要な場合。
(2) 将来の経営幹部育成の為の活性化策として。
(3) 組織のマンネリ化打破。企業活性化には、「新商品」・「新顧客」は必要不可欠な要素。

8、 遊休地の有効活用が求められている時
(1) 眠った資産活用や、不動産の有効活用の可能性がある場合。

 

新規事業が失敗する企業の特徴


1、 経営陣によるコミットメントの不足(何が何でも成功させると言う迫力不足)
2、 ビジョン・目標・大義・方向性などが不明確(分析不足で思いつきだから続かない)
3、 「社員からアイデアがたくさん提案されればいいな」レベルで終わっている事業アイデアは経営者の専権事項
4、 失敗した場合の負担や責任が過大であり、誰も責任を取りたがらない(挑戦意欲をそがないようにする)
5、 提案した企画の事業化時に、会社としての支援環境が希薄(新規チームのみに任せて全社的な協力体制を敷かない)
6、 新規事業開発のスキルを持たないのに、アイデアに期待し過ぎている(準備や人員の配置、ノウハウの購入や蓄積がないのに過大期待)
7、 リサーチ結果に頼りすぎている(リサーチ会社やシンクタンク等のマーケット調査データばかりを鵜呑みにしている。足で稼ぐ直接のリサーチ不足)
8、 とりあえずどこかのコンサルティング会社に丸投げして事業計画をつくっている(中堅企業以上に多い傾向)
9、 リソースがないからと初めからあきらめている(データも情報も、ノウハウがない事を理由に最初から行動しない)
10、 短期的な数値目標や実績を強く求められている(新規事業を育てる思想ではなく、早期に刈り込もうとする思想が失敗を招く)
11、 本業や既存事業と同じ物差しで評価している(収益指標や行動パターンを同じ基準で判断しようとする)
12、 過去の新規事業の失敗の経験が足かせになっている(どうせまた失敗すると言うマイナス思考)
13、 新規事業責任者や推進担当者は、都落ちというイメージが社内にある(本来ならエース人材を配転すべきだが、エースは本業に使い、本業に影響ない人材を配置)
14、 初めての新規事業なのに、失敗が許されない雰囲気がある(トライ&エラーが原則の新規を最初から失敗できない雰囲気は、やはり失敗し易い)

新規事業開発4つの選択

1、 事業拡大
(1) 本業をコアとして、事業周辺へ相乗効果が期待できる分野へ拡大する。
(2) 既存客に、販売可能な取扱商品の拡大を図る。
(3) 既存商品の使い方や販売方法を工夫して、今までとは異なるチャネルへ販売する。

2、 事業多角化
(1) 本業との関連は薄くても、関連分野へ挑戦していく。
(2) 自社の経営資源を多角活用・・・店舗、生産設備、調達先、人材、販売先等から新たな関連分野を広げる。

3、 事業集中
(1) 本業の関連分野にコアをシフトして、新たなコアに仕立てる。
(2) 本業の関連分野で成長性や優位性がある事業に、人材も資金もシフトし、今までの事業比率を下げていく。

4、 事業転換
(1) 本業とは関連性のないまったく異なる分野へ進出する。
(2) FC加盟、別会社での事業展開、他社との業務提携による別事業等。

  RE-経営がお手伝いしていた某社でもこういう事がありました。その会社は建設資材の卸をしているのですが、なかなか業績が上がらず、新規事業として、『浄水器』の販売を始めました。販売するのは、営業部門から2名が選ばれ、責任者には課長クラスをすえました。
何せ、まったくの門外漢の商品なので、どういう風に販売するかも手探りの状態でした。それでも、建材卸先の工務店やリフォーム会社にPRには行くのですが、なかなか芳しい結果は出ません。私達は、現業部門のコンサルティングをしていましたが、経営者からの要請で、『浄水器販売』についてもアドバイスするように求められ、いろいろ作戦を提案しました。その一つが、工務店やリフォーム会社に依存する代理店販売は難しいので、『直販』をすべきだと提案しました。先ずは、今の社員やその家族・親戚・友人に協力して貰い、その良さを実感してもらい、そこから紹介を貰う作戦です。各部の管理者に説明し、販売用のパンフレットも渡し、直販がスタートしました。

 しかし、待てどもいい返事が来ません。浄水器責任者も、毎回お願いはするのですが、「一応、皆にパンフは渡している。今こちらも忙しいから、それどころではない」という言葉が返ってきます。それは分かるのですが、それでは『社内から成果を・・』と言うことが不可能になります。そこで、業を煮やした私達は、経営者からのトップダウンの指示を貰うようにしましたが、その経営者も、浄水器責任者の取り組みの甘さを指摘するのみで、本気で浄水器販売を支援しようと感じは受けませんでした。そうすると、今度は浄水器責任者のモチベーションが一気にペースダウンしてしまい、とうとう「辞めたい」というようになり、そのまま本当に辞めてしまいました。結局この事業は、中途半端な形で中止してしまいました。

 この会社の事例を待つまでもなく、多くの中小企業で新規事業がこういうケースに陥る事が多いようです。先ほどから述べている、『経営者自身が責任者で率先垂範』・『トライ&エラーを繰り返し諦めない』・『新規事業責任者を孤独にさせない』という3つを、常に意識した取り組みが成功への第一歩と言う事になります。

中小企業の「新規事業分野の選択基準」のチェック項目

 番号  診断チェックポイント  あるべき方向性
 1  既に現業、本業の関連から「周辺ビジネス」「周辺サービス」であり、まったくの「ど素人」からの挑戦ではない  未知なる挑戦は基本的に失敗確率が高いので、本業関連分野から始める方が進めやすい
 2  二番煎じの場合、既にどこかの大手が取り組んでいるモデルと、比較して付加価値やビジネスの方向に絶対優位性が確認できる  先行企業と明らかな違い(顧客から見た違いやメリットが大きい事)が明確にできるまで検討する
 3  まだニーズは顕在化していないが、消費者ニーズの流れや外部環境から大きなマーケットと言える  基本的に将来大きなマーケットになるなら、大手が参入しても、それまで先行者利益が多少でも取れる
 4  大きなマーケットの可能性が高いが、競合激化した時に、絶対優位性のプランがある(価格競争やサービス合戦に巻き込まれない武器がある)  価格競争になった場合の付加価値や武器が明確に型決めされている。その武器を「顧客は評価している」とリサーチ済みである
 5  原則ニッチ市場で(隙間)あり、大手参入は難しい、手間のかかるビジネスである  大手が参入しない隙間市場は手間が掛るので、効率化も一緒に検討する
 6  既存のビジネスモデルではあるが、市場ニーズに合わなくなっている場合、形を変えてニーズにはまり込む可能性が高い  現状のビジネスに対するアンチテーゼで商品開発やサービスを開発する。開発のポイントは「顧客の不便解消」「今より大幅コストダウン」「今より顧客サービスが高い」「今より早い」「今より正確」「今より、手間が掛らない」等
 7  自社の「強み」が活かされるビジネスである  顧客にとっての「自社の強み」を固有名詞を使って、具体的に整理する
 8  フランチャイズビジネスや代理店ビジネスは、成功モデルを鵜呑みにせずに、しっかり調査と分析して判断する  FCも代理店ビジネスの当初目論見通り行くことは少ない。先方任せにせず、自ら現地を調査してみる
 9  「旨い話は原則怪しい」事を念頭に、「旨い話」の裏取りをぬかりなく行う  「そんな旨い話が、自社に来るはずがない」と疑って、裏を取ると、いろいろ見えてくる
 10  「皆が賛同するビジネスモデル」「皆が儲かると言うビジネス」は、失敗確率が高い(誰でも気づくと言う事は、既に儲からないモデルになっている)  ニュービジネスモデルは、人より先に気づくから可能性があるので、誰でも気づいた後では、価格競争しか待ってない
 11  Webだけに拘るビジネスモデルだけでなく、リアルでも販売ネットワークづくりが可能である  Webだけで成り立つビジネスも減少傾向にある。Webと何かを絡めてのPRでないと加速度的には進まない
 12  一発必中の狩猟型ビジネスではなく、継続的受注やフォローでの収益が可能なモデルである  高価格商品で粗利が高くても、「売り切りスタイル」は、長期継続ビジネスになりにくい
 13  新規事業の分野は「経営理念」や「行動規範」からも整合性があるビジネスである  儲かるからと、若干如何わしいビジネスは、いかに儲かろうとも、手を出すべきでない
 14  その新規事業を意思決定する前に、いろんな仮説を踏まえて、徹底的に顧客の生の意見を聴いている(アンケートだけでなく、中身のある直接ヒアリングを責任者が数十件以上実施する)  そのビジネスにおける「顧客の購買理由(バイイングポイント)」を徹底調査すれば、その後の販促アイデアや、攻め方の戦略も見えてくる
 15  法律や外部環境が変化すれば、即影響し、大幅な収益悪化やビジネスモデル自体が消滅するようなビジネスではない  法律による追い風ビジネスは一時的である。法律が変わっても続くかどうかを検証する
 16  新規事業の顧客に説明する時、ビジネスモデルがシンプルで分かり易い(複雑な説明が必要な物は広がらない)  新商品や新サービスは、複雑な説明が必要なものは原則売れない。分かり易さを徹底追及する
 17  新規事業の商材やサービスは、購入者やユーザーから「お金が取れる」ビジネスか良くリサーチして検証している  顧客は無料や低価格なら「良いサービス」も「良い商品」と評価しても、ある金額以上なら「メリット」がなければ購入しない
 18  新規事業が上手くいく理由が単なる思い込みでなく、論理的裏付けを検証している(「上手くいかない理由」「他社が参入しない理由」等、ネガティブな要素を検証している)  良い面だけの思い込みで参入しても失敗確率は高くなる。どのビジネスも裏がある。その裏を良く検証してから参入する



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