場当たり採用でちぐはぐになった賃金の原因

人で不足が慢性化した病院や介護施設では、規定通りの給与を提示しても採用できないケースが増えています。職員同士が給与明細を見せ合えば、矛盾だらけの実態に気づき、先に入職した職員よりも、経験も年齢も若い職員の方が高給だったりすると、「あほらしくなってきた、やっぱりここは辞めるわ」と人手不足なのに、辞めていく可能性さえあります。

1、ちぐはぐ賃金になった理由①・・・「採用の焦り」

根本原因は人手不足で、少しでも優秀な人材は速く囲い込みたいという焦りが、ちぐはぐ賃金を生んでいます。現場が疲弊しているから、とにかく誰でも良いから、資格と経験さえあれば採用しよう という焦り姿勢から、「高値買い」をしている可能性があります。本来、採用時の給与ベースを上げるなら、全体給与水準を上げる必要があります。

しかし、そうすると人件費率が急上昇し、経営を圧迫しかねない。だから「だましだましの場当たり給与」で採用した結果、矛盾がどんどん拡大しているのです。

2、ちぐはぐ賃金になった理由②…「基準がない」

更に、入職時に明確な能力・経験基準がないまま、採用したのも一因です。例えば、私たちが支援した病院では、こんな基準を一覧化してもらっています。「看護師採用で、急性期病棟100~300床で5~7年経験 リーダー経験、チューター経験なら、2等級で50~70号俸で基本給を決定。あとは資格手当、職務手当、家族手当を規定通りで支給」という具合です。

賃金テーブルに沿って、その経験と資格でスタート等級と号俸がある程度決めていますので、採用時のちぐはぐさを抑えています。これを全職種作成すれば、採用面談時に給与を提示する事ができます。求職者とお互い腹の探り合いをしなくてもいい訳です。

3、ちぐはぐ賃金になった理由③…「前職時代の給与を信じ過ぎる」

ほとんど病院や介護施設では「前職時代の給与の維持」を意識しています。前職時代の給水水準が能力や貢献にあったものなら問題ありませんが、採用してみたら、全然違っていたということは普通に起こっています。また、求職者も「少し盛って」いることもあります。バレない程度の盛り方は、「実態よりプラス2~3万円」程度です。

しかし、この2~3万円の違いが、後から問題を不公平感の温床になるのです。だいたいの基本給水準はその辺りに集中しているからです。金額の高ではありません。「あの人より、私が少ないのは納得がいかない」という心理です。1000円でも高ければいいのです。

4、ちぐはぐ賃金になった理由④…「評価制度が機能していない」

人事評価制度が機能していないのも大きな原因です。評価の結果によって高い昇給する人、普通昇給する人、昇給ゼロの人、減給する人がなく、みな一律昇給を繰り返した結果、「問題職員も同じ昇給で、普通によくやっている職員のモチベーションが下がる」訳です。そして、そういう人から辞めていき、問題職員、トラブル職員だけが残るという悲惨な結果が待っているのです。

評価制度は、評価者の資質や評価能力に問題がある場合、逆効果になる可能性もあります。しかしそれでも、ないよりはましだと思います。

ちぐはぐ賃金を放置していると、組織が混乱し、医療介護品質にまで影響します。早めに制度化を急いだほうが良いでしょう。しかも、現状とあるべき制度の間に、「移行期間制度」を入れることで、人件費上昇を抑制しつつ行うが現実的な対応策でしょう。

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