看護・介護管理職のリアルな「人事評価項目」の書き方

チームワークのレベルを上げるのは、リーダー・管理職のマネジメント次第と言えます。リーダー管理職はどういう点を評価すべきか、またどう育成すべきは、理事長や施設長の永遠の課題だと言えます。どんなに職員向けに人事評価やシステムを入れても、リーダー管理職には、これと言った手を打ってない病院や施設は多いようです。一般職員にように、実務や専門がハッキリしているのではなく、リーダー管理職のマネジメントの評価は曖昧になりがちです。

私達が今まで、管理職向けに人事考課表を各種作成してきましたが、その基本的な内容や主旨について、3回に渡ってご紹介したいと思います。

経営者のニーズに応じて、リーダー・管理職に要求する基本カテゴリーを決めて、その詳細内容を議論していきます。では、一つずつどういう着眼があるか説明していきましょう。

1、 部下の育成や指導

これは、当たり前な表現ですが、これを行動面でどういう箇所を見るかを決めていきます。「部下育成や指導」では、「部下個人毎のキャリアプランの作成や継続チェック」そして、「面談での指導回数や内容」を評価します。個人毎のキャリアプランでは、各部下の3年後の求めるスキルを話し合いながら決めて、モチベーションアップにつなげているかがポイントになります。

2、 部門の行動計画のPDCA

ここでは、あらゆる方針や具体策について「アクションプラン(行動計画)が作成されているか」や「行動計画はスタッフ全員が共有して、皆でチェックしているか」等がポイントになります。また、年度の計画では、『新たな挑戦項目があるか否か』も判断基準に持って行きます。

3、 経費を意識した効率的な部門運営

今は、効率と品質を両立する事が求められる時代です。特にコスト面では意識の薄いリーダー・管理職は意外に多いようです。そこで、ここでは、「小さな改善活動を繰り返して、継続的に現場で効率が上がる変化を出しているか」が評価ポイントです。その中身が2種類にあります。その一つが、「具体的な物品費・費用が出るモノのコスト削減」であり、もう一つが「目に見えないが、職員負担に大きな影響を及ぼす時間コスト」です。これらの改善状況や取組が評価基準になります。

4、 会議効率の向上

報告会と検討会を分けて、「少ない会議で、報連相の漏れも防ぎ、皆の意見聴取ができる努力」をしているかが評価基準です。何でも「会議、会議」で、会議時間ばかり取られて、利用者への時間や事務時間が減少すれば、品質にも職員負担にも影響します。この取り組み状況も重要な評価基準だと考えます。

5、効果的研修の参加と活用

外部研修も大いに結構ですが、その研修結果が現場で活用されているのか?参加した職員だけの「個人ノウハウ」だけに終わってないか?など、研修の効果性や活用性がリーダー・管理職の評価基準になります。ただ研修に出だすだけでは、何の評価にもならないのです。

6、他事業所への情報公開や情報提供

これは、「自部門での取り組み事項や活動結果を、他事業所のリーダー管理職へ情報提供しているか」と言う事です。管理職によっては、「自部門至上主義」のように、自部門さえよければ良いと言う考えの人も時折見かけます。しかし、それでは「部門間の連携」も思うようにできません。情報と言うのは「出す人には集まる傾向」があります。自分の成功例や作成したデータ、フォーム、資料等を「言われなくても」、どこまで積極的に他部門にも見せているか、提供しているかが評価の見極めになります。

7、「見える化」による情報公開と共有

ここのポイントは、「見える化により、事務所内・ステーション内の掲示物、ボード、ノート、PC等で、情報の共有ができるよう努力をしているか」を見ます。ホワイトボードや掲示版は、古いコピーを貼りだす為にあるのではなく、今のタイムリーな情報を書き出して、皆に周知する為にあります。「見やすい工夫」も評価のポイントです。

8、利用者・患者満足向上

これは当たり前の事ですが、利用者・患者満足度の向上の責任はリーダー管理職にあります。評価ポイントは、先ず「利用者・家族から担当職員への具体的な要望、苦情、お褒めを多く聴取できているか」です。これは、「良い事も、悪いことも」含めた事実の聴取能力を指します。次に「部門内のサービス全般で新たな事(今までやってきた事のリニュアルや新規取組)の挑戦をしているか(例 レク、行事等)」です。患者利用者満足度向上を図るには、常に顧客視点に立った新たな取り組みも必要です。そういう事に挑戦しているかどうかが評価尺度になります。

9、実習生への対応

ここでは「実習生が積極的に取り組めるよう、働きかけたりフォローを具体的に部門でしているか」がポイントになります。時に介護施設の場合、実習生対応の如何で、介護職の採用面にも大きく影響してきます。リーダー管理職として、実習生へ良い対応ができるようスタッフに教育できていれば、実習生が就職したくなる可能性も高くなります。

10、目標への動機付けと教育

これは、「今当面の課題を部門の職員全体に分かるように指示指導し、動機付け・意識付けの指導機会を確実にとっているか」がポイントです。モチベーション維持の為の努力とも言えます。今ではかなり比重の高いマネジメント業務と言えます。

11、管理者としてのチャレンジスピリッツ

ここでの評価ポイントは「現状安住せず常に新しいテーマを見つけ、少しでもレベルを上げるよう努力する姿勢・挑戦意欲はあるか」です。事故やトラブルは慣れた業務でのマンネリから発生する場合が多くあります。管理者は常に挑戦目標を見つけ、高い次元へのチャンレンジが求められるのです。それが、マンネリ打破のポイントでもあります。

12、業務上のチェック

「誰が、いつまでに、何を、どのように行うかを明文化し、当事者が忘れないようチェックと指導をしているか」です。ここでは、管理者として一番いけないとされる「決めっ放し」「言いっ放し」への問題提起です。「うちの管理職は、面倒くさい位、良くチェック、確認される」位に評価が丁度良いと言うことです。

13、段階的教育の実施  

リーダー・管理職の主要業務の一つが、教育です。しかし現場の忙しさを理由になおざりにしているリーダー・管理職も多数派のような気がします。段階的教育とは、どんなに忙しくても教育時間と指導方法を工夫して、部下が少しでも業務レベルが上がるよう指導する事です。そして、自分ばかりがバタバタと働き回らなくても部門が回るようにする事が教育です。従って、リーダー・管理職が自分ばかり汗水垂らして、忙しそうにしている事は評価されません。

14、権限移譲

権限移譲とは、言いっ放しの任せっぱなしにする事ではありません。任せた事に対して、部下の状況を把握すべくチェックとコントロールは怠りなくやる事は必須条件です。しかし、何でもリーダー・管理職自身が首をだし、自分の意見に従わせる事を四六時中やるなら、決して人は育ちません。適切な権限移譲を段階的に進めて、「実務作業では、リーダー・管理職がかなり楽になった」と実感できるようでなければ権限移譲は進んでいるとは言えないでしょう。そこが評価のポイントになります。

15、困難な問題の対処

クレーム処理や部門間のトラブルなど難しい問題の処理には、自身が積極的に関与し、部下に幹部としての姿勢をみせているかどうかが基準になります。面倒な事や嫌な事を部下にやらせて、リーダー・管理職は好きな事をやるようでは、完全なリーダー・管理職失格の評価になります。

16、仕事の配分

仕事の配分とは、「今目の前の業務ができる人のみ、いつまでも過重労働をさせないように手を打っているか」と言う事です。いつまでも、できる部下に仕事が集中するのは、マネジメントと教育の放置と言う事になります。特に昨今は、「できる職員から離職する傾向」もあるので、仕事の適正配分のマネジメントができないリーダー・管理職は「人潰しの幹部」のそしりを受けるかも知れません。

17、個別指導

個別指導では、会議やミーティングだけでなく、個人面談を定期的に実施しているかと言う事です。「部下には誰彼と分け隔てなく、注意、指導を行っており、言いにくい部下にはあまり言わず、言い易い部下ばかりいつも注意するような偏重をしないようにしなければなりません。個別指導でしっかり部下の言い分を聞き、リーダー・管理職の要望も話しているかが評価ポイントです。

18、人間的なふれあい

人間的なふれあいとは、部下に対してはリーダー・管理職としての「業務上のマネジメント」だけでなく、人間的なふれ合いを常に心がけているかを見ます。そして、その結果、部下に対して「褒める」「叱る」「注意する」「一緒に喜んで上げる」「一緒に考えてあげる」と言う姿勢と行動があるかが評価の基準になります。

19、方針の伝達

経営者やドクター、上司からの指示命令でも、ただ伝達するだけでなく、真意を咀嚼(噛み砕いて)して分かりやすいよう動機付けしているかがポイントです。部下からの面倒くさい質問に対しても、部下が納得行くよう説明し、「決まった事だから、理屈を言わず従いなさい」と言った類の半強制的な物言いはしていないかを見ます。単なるメッセンジャー機能だけのリーダー・管理職は評価が低くなります。

 

これまで、19項目のリーダー・管理職専用の人事評価項目とその評価ポイントを紹介してきました。各項目の内容や行動基準は、これらを参考に各病院、介護施設オリジナルで検討される事をお勧めします。

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